最高人民法院(最高裁)の意見では、同じ事件は同じ判決を下し、類似事件は検索しなければならない

(2020年7月31日から試行)

2020年7月27日、最高人民法院は「法律適用の統一と類似事件の検索の強化に関する指導意見(試行)」を発表した。同「指導意見(試行)」は2020年7月31日から試行される。「指導意見」は、裁判所の裁判不一致を解決することを意図している。最高人民法院は、裁判官が過去に類似した事件の中の規則を利用して立法と司法解釈の中の空白を埋めるやり方を肯定した。

「指導意見(試行)」の設立背景

司法責任制の総合関連改革を深化させ、司法責任制を全面的に実施することは、新たな司法体制改革の重要な任務である。類似事件の検索メカニズムを健全化し、先行判決は裁判官が裁判の参照または参考にすることは、法律の適用を統一し、公正な司法を促進する重要な制度保障となる。ここ数年、最高人民法院(最高裁)及び一部の地方裁判所はそれぞれ類似事件の検索メカニズムを設立し、担当裁判官が関連事件を審理する時に類似事件の検索を行い、合議廷、専門(主審)裁判官会議、審判委員会が事件検討際に必要な参考を提供するよう求められている。このメカニズムを実行して以来、裁判官が正確な審判を支援する役割をある程度果たした。だが、類似事件の検索の適用範囲、検索主体及びプラットフォーム、検索範囲、結果の運用などは、明確な統一規定がまだ不足しているため、最高人民法院(最高裁)は各級裁判所の有益な経験を真剣に総括した上で、十分な調査と論証を経て、幅広く意見を求め、「意見」を研究設定し、類似事件の検索を中国特色ある、成文法体系の下の具体的な制度と位置づけ、法律適用の統一を実現することを目指している。

「指導意見(試行)」内容の抜粋

一、類似事件の検索をしなければならない状況

類似事件の検索は、裁判官に正しい司法判断を下すのに役立つ方法である。法律適用の問題に係争があり、明確な審判規則がない、または統一的な裁判規則が形成されていない場合などにおいては、裁判官は法律適用問題をより真剣に検討し、類似事件を検索する上で、慎重に裁判する必要がある。裁判権の行使を規範化し、法律の適用統一を促進するために、「意見」は以下の四つの状況に該当する場合、類似事件の検索をしなければならないと規定している。

    1. 専門(主審)裁判官会議または裁判委員会に提出して討論しようとする事件;

    2. 明確な裁判規則が欠けている、または統一裁判規則が形成されていない事件;

    3. 裁判長や法廷長は審判監督管理権限の要求に基づいて、類似事件の検索を求めれらる事件;

    4. その他の類似事件の検索が必要な事件。

二、類似事件の検索範囲

類似事件の検索の過程はある意味で法律適用問題を研究する過程である。類似事件の検索活動が秩序よく展開され、法律の統一的適用を促進するために、「意見」は類似事件の検索の範囲を明確にした。

    1. 最高人民法院(最高裁)が発表した指導的な判例;

    2. 最高人民法院(最高裁)が発表した典型的な判例と判決発効な事件;

    3. 本省(自治区、直轄市)高級人民法院が発表した参考になる判例と判決発効な事件;

    4. 上級人民法院及び当裁判所の判決発効の事件。

また、裁判業務の実践に関連して、「意見」は指導的な判例のほか、ここ三年近くの判例や事件を優先的に検索し、すでに前の順位で類似事件を調べ出した場合、検索し続けなくて結構。

三、訴訟の参加者が裁判所に類似事件の検索報告書を提出する

近年、司法工作と情報技術が融合に発展するに伴い、類似事件の検索は一般大衆に対して、現実なこととなる。司法実践においては、一部の当事者、弁護士及びその他の訴訟参加者は、事前に類似事件の検索を行い、裁判所に自分の訴求または抗弁を支持するために検索報告書を提出していた。これに対して、「意見」では制度上に主に二つの措置を講じた。第一は公訴機関、事件当事者及びその弁護人、訴訟代理人などに類似案件の検索報告書の提出を認め、裁判官が審判の参考とする。第二は、人民法院の回復方法を明確にした。即ち公訴機関、事件の当事者及びその弁護人、訴訟代理人等が指導的な判例を提出して起訴(訴訟)の理由とした場合、人民法院は裁判文書において、それを参照するか、またその理由を説明しなければならない。裁判の受容性を高め、法律効果と社会効果を統一させる。またその他の類似事件を訴訟の理由として提出する場合、人民法院は釈明などの方式で対応することができる。

四、類似事件の検索を通じて見付けた判例や事件が、裁判官の事件審判に与える影響

中国の現行の法律制度によると、検索の類似事件には法的拘束力がないが、事実上に一定の制約と参考性がある。特に、「中華人民共和国人民法院組織法」及び「最高人民法院(最高裁)の判例指導工作に関する規定」に基づき、最高人民法院(最高裁)が発表した指導的判例は明らかな制約があり、即ち検索した類似事件は指導的判例である場合、人民法院はそれを参照して裁判を行わなければならない。指導的な判例以外の判例や事件には拘束力がないが、一定の参考価値があり、人民法院は検索したこれらの類似事件を参考として、裁判を下すことができる。

五、類似事件の検索中における法律適用の不一致についての対処方法

中国は成文法の国であり、人民法院が法律に基づいて事件を裁くべきで、類似事件の検索は裁判官の案件審判を補助する一つの工作メカニズムにすぎない。検索した類似事件は裁判官の事件審判に対して一定の参照または参考の役割を果たす。類似事件の検索で法律の適用問題が一致していないことがわかった場合、裁判官は自分の法律に対する理解に基づいて慎重に裁判を行い、法律の適用に関する異なる問題に対して、関連メカニズムを通じて解決することができる。このため、「意見」では、検索した類似事件には法律の適用が不一致のものがある場合、人民法院は裁判所のレベル、裁判時間、裁判委員会の検討を経たかどうかなどの要素を踏まえ、「最高人民法院(最高裁)が法律適用不一致の解決メカニズムの設立に関する実施弁法」などの規定に基づき、法律適用の不一致解決メカニズムを通じて解決し、法律の統一を実現することを目指す。

「指導意見(試行)」に対する公衆と業界の反応

「正義は実現するのみならず、見える形で実現するようにすべきである」。これはまさに類似事件の検索を統一する規則の価値である。

検索ルートを明確化した後、類似事件の検索範囲がより精確になり、結果もより参考的な価値のあるものになる。さらに重要なのは、これを基礎にして各地の司法データベース間の技術障壁を取り除くのに役立ち、全国統一の裁判判例データベースを建設するために堅固な基礎を打ち立てる。

裁判官に類似事件の検索報告書を提出することが今後、弁護士の仕事となる。指導的判例の研究を強化し、『意見』第十条で、裁判官が指導的判例に対し「裁判書の論理部分において対応しなければならない」と規定しているので、「してもいい」ではなく、「しなければならない」との規定であると言える。類似事件の検索報告書は単なる裁判文書の提出ではなく、裁判文書の中にある「裁判規則・裁判主旨」を丁寧に取り出さなければならない。欧米判例法の「判例区別技術」がますます重要視されるようである。3、5年ひいては10年後にまた振り返って見れば、この「意見」は「中国式判例法」の標識的文書になるだろう。

さらなる適用に関する規定が必要。無論、適用に関する規定だけではまだ足りなく、広範な法学院の教育改革および裁判官、弁護士の研修が必要。これは長期にわたるプロジェクトであり、法律従業者全体の終身教育にもかかわっている。

類似事件の検索制度は、中国司法のプロセスにおいて「同じ事件、同じ判決」を実現するための大きなプロジェクトであり、数多くの支持条件や技術の整備と改善が必要である。

結論

「指導意見」の公布と試行は、中国の裁判制度を改善し、訴訟当事者の利益をよりよく保護する法的改革である。中国の法律従業者は、類似案件を検索するスキルを習得し、また、裁判所によって検索された事件や裁判所に提出した事件を分析する能力を向上させることによって、クライアントに十分かつ専門的な法的サービスを提供する。且つ、すべての法的手続きにおいてクライアントの権益を最大限に保護する。

添付:

最高人民法院(最高裁)による「法律適用の統一と類似事件の検索の強化に関する指導意見(試行)」(2020年7月31日から試行される)

出所:最高人民法院(最高裁)

法律の適用を統一し、司法公信力を向上させるため、裁判工作の実際と結びつけて、人民法院の類似事件の調査業務について以下のように意見を提出する。

一 本意見にいう類似事件とは、判決待ち事件と基本事実、紛争焦点、法律適用問題などにおいて類似性を有し、かつすでに人民法院(裁判所)の裁判により効力を生じた事件を指す。

二 人民法院が受理する事件は以下のいずれかの状況がある場合、類似事件の検索を行うものとする。

   (一) 専門(主審)裁判官会議または裁判委員会に提出して討論しようとする場合

   (二)裁判規則を明確にしていない又は統一裁判規則を形成していない場合

   (三)裁判長・法廷長が裁判監督管理権限により類似事件の検索を要求する場合

   (四)その他類似事件の検索が必要な場合

三 担当裁判官は中国裁判文書ネット、裁判判例データベースなどにより、類似事件の検索を行い、検索の真実性と正確性に対して責任を負う。

四 類似事件の検索範囲は、一般的に以下のものを含む。

  (一)最高人民法院(最高裁)が発表した指導的判例。

  (二)最高人民法院(最高裁)が発表した典型的な判例及び判決発効な事件。

  (三)当省(自治区、直轄市)高級人民法院が発表した参考的な判例及び判決発効な事件。

  (四)上級人民法院及び当裁判所の判決発効な事件。

指導的な判例のほか、ここ三年近くの判例や事件を優先的に検索する。すでに前の順位で類似事件を調べ出した場合、検索し続ける必要がない。

五 類似事件の検索はキーワードによる検索、法条関連事件による検索、事件関連検索などの方法を採用することができる。

六 担当裁判官は判決待ち事件を検索結果と類似性の識別と照合を行ない、類似事件に属するかどうかを確認するものとする。

七 本意見に規定された類似事件の検索を行うべき事件について、担当裁判官は合議廷で評議し、専門(主審)裁判官会議における討論中及び審判報告書には類似事件の検索状況を説明し、又は別途に類似事件の検索報告書を作成し、照会するために事件関連ファイルに入れるものとする。

八 類似事件の検索説明または報告は、検索主体、時間、プラットフォーム、方法、結果、類似時間の裁判要点及び判決待ち案件の紛争焦点などの内容を客観的、全面的、正確に含まれ、そして類似事件の参照可否、または参照結果の運用状況を説明する。

九 検索した類似案件が指導的な判例である場合、新規法律、行政法規、司法解釈と衝突し、又は新たな指導的判例に取り換えられる場合に限り、人民法院はそれを参照して判決を行なうものとする。

その他の類似事件を調べだした場合、人民法院は裁判の参考にすることができる。

十 公訴機関、事件の当事者及びその弁護人、訴訟代理人等が起訴(訴訟)の理由として指導的な判例を提出した場合、人民法院は裁判書において、それを参照するか、またその理由を説明しなければならない。その他の類似事件を訴訟の理由として提出する場合、人民法院は釈明などの方式で対応することができる。

十一 調べ出した類似事件とは法律の適用が不一致である場合、人民法院は裁判所のレベル、審判時間、裁判委員会の検討を経たかどうかなどの要素を考慮し、「最高人民法院(最高裁)が法律適用の不一致の解決メカニズムの設立に関する実施弁法」などの規定により、法律適用不一致の解決メカニズムをいかし解決することができる。

十二 各級人民法院は積極的に類似事件の検索工作を推進し、技術の研究開発と応用訓練を強化し、類似事件の検索選別の知能化、精確化レベルを向上するものとする。

各高級人民法院は現代化情報技術を十分に活用し、裁判判例データベースを構築し、全国の統一、権威ある裁判判例データベースを建設するために堅固な基礎を打ち立津者とする。

十三 各級人民法院は定期的に類似事件の検索状況を取りまとめ、裁判官の裁判に参考にするため、一定の形を通じて当院または管轄区の裁判所で公開し、と同時に上級の人民法院の裁判管理部門に届出するものとする。

十四 当該意見は2020年7月31日から試行される。